法人の種類と課税範囲

法人の種類(法法2五~九)

普通法人・・・共同組合等、公益法人等、公共法人以外の法人をいう。

 具体例→株式会社、合同会社、特別目的会社

協同組合等・・法人税法別表第三に掲げる法人

 具体例→消費生活協同組合、信用金庫

公益法人等・・法人税法別表第二に掲げる法人をいう。

 具体例→税理士会、商工会議所

公共法人・・・法人税法別表第一に掲げる法人をいう。

 具体例→国立大学法人、地方公共団体

人格のない社団等・・法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう。

 最近の法律は第1条 趣旨、第2条 定義規定という形が定着しています。

 法人税法でいえば、1号 国内から44号 地方税まで、実際には枝番もあるので、さらに定義は多いですが、法人税法の中で、定義規定のある文言が出てきた場合、その意味は必ずその定義の内容となります。

 これと異なり、略称規定というものもあります。例えば法人税法第34条第1項で、「内国法人が支給する給与(退職給与で業務連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有するもの及び第三項の規定の適用のあるものを除く。以下この項において同じ。)という表現があります。

 この場合、カッコ書きの意味で「給与」と使うのは、「この項」つまり法人税法第34条第1項の中だけです。

 あまり厳密に定義規定と略称規定の区分に神経質にならなくてもいいですが、その使われる範囲(法律全体なのか、限られた範囲なのか)は意識して条文を読むようにしましょう。

(本書でも略称規定であるところ「定義」と記載しています。)

 さて、上に普通法人、協同組合等、公益法人等、公共法人、人格のない社団等の定義を揚げています(順序は条文とは違います。)が、法律では、解釈が紛れないように定義しています。

 上の5つの定義のうち、法人は4種類、法人でないものは人格のない社団等だけです。

 なぜ、法人税法なのに法人ではない「人格のない社団等」が定義されているかというと、

「人格のない社団等は、法人とみなして、この法律を適用する(法法3)。」からであり、「人格のない社団等」が収益事業を行う場合、法人税法の規定により納税義務があるからです(法法4①)。

 さて、法人とはなにかというと、自然人以外で、法律行為の主体となれるものであり、その設立には必ず根拠規定が存在します。

 法人は、商業登記簿(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、外国会社等)、又は法人登記簿(一般社団法人、NPO法人、社会福祉法人等)に登記されます。

 例えば、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社は会社法が設立根拠法です。

 ちなみに、会社法では合名会社、合資会社、合同会社を総称して持分会社といいます(会社575①)。

 では、有限会社の設立根拠法は何でしょう。答えは「会社法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」です。この法律の第3項で「~廃止前の有限会社法・・の規定によるこの法律の施行の際現に存するもの・・は・・会社法の規定による株式会社として存在するものとする。」とし、次の第3条第1項で、「前条第1項の規定による株式会社は、会社法第6条第2項の規定にかかわらず、その商号中に有限会社という文字を用いなければならない。」と規定されています。

 かなり話が脱線してしまいましたが、脱線ついでに、さきほど人格のない社団等は法律行為の主体となれないといいましたが、例外があります。民事訴訟法では、「法人でない社団または財団で代表者の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる(民訴29)。とされています。

 これは、集団訴訟などの場合、仮にこの規定がないと裁判所、当事者とも多数の手間が掛かるため、訴訟経済上このような規定があると言われています。

 さて、話を戻して、協同組合等、公益法人等、公共法人の法人税法上の定義は、それぞれ別表3、別表2、別表1(ここでいう別表とは法人税法の別表のことであり、法規集の法人税の最後、附則の次にあります。)に掲げられたものであり、それら以外のものはないことから、このような規定のことを「限定列挙」といいます。

 そして、法人のうち、協同組合等、公益法人等、公共法人以外のものを普通法人というわけです。

 ここで、実務上、注意しなければならないのは、商号中「協同組合」の文字が含まれているから、法人税法も協同組合等と判断はしないでください。

 例えば、単位農協(〇〇農業協同組合)は法人税法上も協同組合等ですが、農業協同組合連合会は協同組合等ではなく、公益法人です。

 また、基本的には各別表の名称欄は、根拠法においてその名称中にその文字を用いなければならず、他の法人はその文字を用いてはならないとなっていますが、中小企業等協同組合法では「第六条 組合は、その名称中に、次の文字を用いなければならない。一号 事業協同組合にあつては、協同組合・・・」とありますが、〇〇漁業協同組合の根拠法は水産物協同組合法です。

法人の課税範囲(法法4)

法人には「各事業年度の所得に対する法人税」、「退職年金積立金に対する法人税」について法人税を納める義務があるが、ここでは「「各事業年度の所得に対する法人税」について説明します。

(備考)

退職年金積立金に対する法人税とは、退職年金業務を行う内国法人(具体的には信託銀行、生命保険会社等)が、各事業年度開始時の退職年金等積立額の1%を納付するというものですが、租税特別措置法第68条の4により、平成11年4月1日開始事業年度から課税が停止されています。

内国法人

普通法人  ・・・          全所得課税

協同組合等 ・・・          全所得課税

公益法人等 ・・・          収益事業のみ課税

人格のない社団等 ・・   収益事業のみ課税

公共法人  ・・・          法人税を納める義務はない。

外国法人  ・・・          国内源泉所得のみ課税

(人格のない社団にあっては国内源泉所得で収益事業に該当するもののみ課税)

 法人税法第4条から上記のようになります。

  • 内国法人の定義は「国内に本店又は主たる事務所を有する法人」です。
  • 外国法人の定義は「内国法人以外の法人」です。
  • 「収益事業」とは「販売業、製造業、その他政令(法令5)で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」をいいます(法法2十三)。
  • 「国内源泉所得」の定義は法人税法第138条に記載のとおりです。