欠損金額が複数事業年度ある場合の通算法人の欠損金額の通算

 令和2年度の法人税法の改正により、令和4年4月1日から開始する事業年度より連結納税制度は廃止され、グループ通算制度に移行されました。

 この改正に伴い、既に連結納税の承認を受けていた連結法人グループは、「グループ通算制度へ移行しない旨の届出書」を提出しない限り、グループ通算制度に移行します。

 また、新たにグループ通算制度で申告しようとする法人は、通算親法人、通算子法人となろうとする法人の連名で、原則としてその適用を受けようとする事業年度開始の日の3月前までに「グループ通算制度の承認の申請書」を提出し、当該開始の日の前日までに申請の却下がされないかぎり、みなし承認されます。

 グループ通算制度の最大のメリットは、グループ法人間の損益の通算ですが、その計算過程は、単体申告に比べ、非常に複雑となっています。

 この制度は大きく分けて①損益通算と②欠損金の通算に分かれます。

① 損益通算(法法第64の5)

 当事業年度(申告しようとする事業年度)において(単年度で)所得金額がある通算法人の所得金額と、(単年度で)欠損金額となっている通算法人の欠損金額を通算します。これは別表7の3の指示どおりに計算すれば容易に算出できます。

 所得のある法人は、同別表5欄で算出された金額を別表4の41欄で減算し、欠損であった法人は別表7の3の11欄で算出された金額を別表4の41欄で減算します。

② 欠損金の通算(法法第64の7)

 次に当事業年度(以下「適用事業年度」といいます。)前10年以内に発生した欠損金でまだ控除しきれていない欠損金がある場合で、上記①の処理後もまだ、適用年度において所得金額がある通算法人がある場合、欠損金の控除を行います。

 通算法人の欠損金の控除の計算は、法人税法第64条の7に規定されていますが、特に中心となる第1項第2号の下にイ、ロ、ハ、その下に(1)、(2)、(3)、さらにその下に(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)と各号列記の部分が四重構造となっており、条文の構造が非常に複雑となっています。

 そこで、グループ通算法人の欠損金の控除の考え方を詳しく説明します。

 まず、グループ通算制度では、欠損金は特定欠損金と特定欠損金以外の欠損金(以下「非特定欠損金」といいます。)に分けられます。

 連結納税制度から移行した場合は、特定連結欠損金個別帰属額は特定欠損金に、非特定連結欠損金は非特定欠損金となります(改正法附則28③)。